テレワークの普及によって、ライフスタイルが変化
新型コロナウイルスの発生以降、通勤時や職場での密を回避するため、オンラインでつながりながら、自宅や自宅近くのサテライトオフィスなどで仕事を行うテレワークが普及しました。当初は多くの企業にとって手探りだったこの働き方も、今では広く定着し、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は、56.4%にものぼります。
※(出典)東京都産業労働局 2022年01月07日発表 報道資料「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!12月の調査結果」
職場への「通勤」がなくなると、時間や体力、心にも余裕が生まれやすくなります。従業員が子育て・介護と仕事の両立、プライベートの充実などをはかれることは、生産性の向上や離職の防止にもつながり、企業側にとっても大きなメリットになるでしょう。
悩ましい、家事などによる「中抜け」問題
一方で、テレワークによるデメリットも生じています。そのひとつが、勤怠管理の難しさです。同じ空間で仕事ができないため、企業側は労働者に対して「いつどれくらい休憩を取っているのかわからない」「勤務時間中に、仕事以外のことをしていないか」といった疑いをもちやすくなります。
また、従業員側にとっても、仕事とプライベートの空間が一体になってしまうことで、勤務時間中にちょっとした家事や雑用をやることになったり、オンオフの切り替えができずに気づけば長時間労働になってしまったりという問題があるでしょう。
特にコロナ禍では、保育園や学校、デイサービスなどが突然休みになり、自宅で育児や介護をしながら働かなければならないケースも珍しくありません。その場合、企業側としても柔軟な対応をせざるを得ず、今までのように勤務時間で一律に区切る労働管理の方法では対応できなくなっているのが現状です。
テレワーク中も、基本は就業規則の適用を
それでは、テレワーク中に中抜け時間が発生した場合、従業員側も企業側もどのように対応したら良いのでしょうか。基本的に労働者は、職場に出社する場合と同じ、始業及び終業の時間で労働時間を守らなければなりません。そして、企業側には、労働者の労働時間について適正に監視し、把握する義務があります。しかし監視といっても、自宅やサテライトオフィスに監視カメラを設置するなどの方法は現実的ではありません。そのため、パソコンの使用時間の記録、または勤怠について入力するアプリの使用を労働者に義務づけるなど、何らかのシステムやツールを用いた勤怠管理が必要になるでしょう。
「中抜け」時間の扱いについて共通の認識を持つことが大切
そして、特に問題になりがちな中抜け時間については、その開始時間と終了時間を労働者に報告させることで、休憩時間として扱うことが可能です。労働者のニーズに応じ、休憩時間の長さに応じて始業時間を繰り上げる、または終業時間を繰り下げることで、定められた分の労働時間を確保します。抜けなければならない時間が長く、そのような対応が難しい場合は、時間単位の年次有給休暇として取り扱うことも可能です。
労働者側、企業側がテレワークのメリットを存分に生かすためにも、このような中抜け時間の報告・把握をしっかりと行える仕組みや制度づくりを進めていく必要があるでしょう。そして、従業員側がこのような仕組みに対応して遵守できるよう、中抜けする場合の時間の扱いについてしっかりと周知させることも大切です。