職場における「パワハラ」の3大要素
「パワーハラスメント(通称:パワハラ)」という言葉やその意味が、周知されてきた現代。パワハラの温床になりやすい仕事の場(職場)においては、一層の配慮や対策が必要です。職場でパワハラが横行すれば、労働者が能力を十分に発揮できないだけでなく、個人の尊厳や人格を傷つけてしまいます。ほかにも、業務に影響が出たり、貴重な人材が離職したり、会社の社会的評価が失墜したりといったデメリットにもつながるでしょう。そのため、2019年に改正された労働施策総合推進法では、職場における「パワーハラスメント」について、事業主に防止措置を講じることを義務づけています。
それでは、職場における「パワーハラスメント」の定義とは、どのようなものなのでしょうか。具体的には、以下、3つの要素を満たすと、「パワーハラスメント」だと認識される可能性があります。
「1.優越的な関係を背景とした言動」であり、「2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により、「3.労働者の就業環境が害されるもの」。以上の3つの要素を客観的にみながら、判断されます。もちろん、業務を遂行する上では、どうしても指導や指示が必要な場面が多くあります。しかし、熱が入りすぎるあまりに指導や指示の適正な範囲を超え、“無意識のパワハラ”を行ってしまわないよう注意する必要があるでしょう。
「職場」の定義にも注意が必要
「職場」という言葉を聞くと、労働者が普段通勤しているオフィスや店舗、作業場などに限定しがちですが、必ずしもそうとは限りません。例えば、出張先や取引先、またはそこにいく道中などであっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。 さらに、勤務時間外の飲み会や休憩中のランチタイム、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。
しかし、それが「職場」であるかどうか、さらにその事案が「パワハラ」かどうかの判断は、あくまでその状況をふまえて個別に行う必要があります。問題が起こったのは職務と関係がある場だったのか、誰がその場にいたのか、参加が強制されている場所だったのか等、さまざまな要素を照らし合わせての判断が必要になるでしょう。
解決するには、労働者と企業、双方の意思表示が大切
パワハラの被害に遭った、または職場でパワハラが行われていることを知った労働者は、まず声を上げることが大切です。被害者であれば「自分はイヤだ」という意思を、同僚であれば、見過ごさずに「それはやめた方がいい」といった意思をはっきりと伝えましょう。パワハラを行っている本人に伝えるのが難しいときは、迷わず、会社の人事労務などの相談担当者や信頼できる上司に相談してください。
会社が対応してくれないというときは、労働組合や都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ相談することもできます。
しかし、いくら当事者が声を上げることを促しても、告発によって、さらなる精神的苦痛や業務上の不利益などを被る可能性がある環境では、労働者も声を上げにくくなってしまいます。だからこそ事業者側も、労働者が安心して相談できるような体制を整備し、必要と判断した場合は、雇用管理上必要な措置を講じられる準備をしておかなければなりません。そのためには、情報の守秘義務の徹底、パワハラを訴えることによって、解雇をはじめとする業務上の不利益がある取り扱いを絶対にしないという姿勢を労働者側に示す必要があるでしょう。労働者にいかに安心して相談できる環境を用意できるか、そして、事業者側も「職場でパワハラを横行させない」という意思を労働者に対して強く示すことが大切です。