「こころ」の病気になる可能性は、誰にでもある
痛みによる自覚症状があったり、専門の機械で目に見えない部分まで検査できたりする身体の病気とは違い、目に見えない「こころ」の病気は、なかなか自覚も診断もしにくいものです。しかし近年、新型コロナウイルスによる生活の変化の影響もあり、こころの病気になる人たちが急増しています。
こころの病気というと、うつ病から連想されるような無気力で落ち込んだ状態を思い浮かべやすいですが、ほかにも、さまざまな病気があります。たとえば、統合失調症や強迫性障害、パニック障害、薬物をはじめとする何かへの依存状態もこころの病気の一種です。統合失調症のように「なんとなく集中力が続かない」「考えがまとまらない」など、一見病気ではないように思える症状もあります。誰もが、身体だけでなく、「こころ」も病気になることがあるということを自覚し、ていねいなケアを意識することが大切です。
落ち込みやイライラのすべてが「病気」ではない
私たちが生活を送る中では、いつも良いことばかりが起こるわけではありません。仕事や家庭環境、人間関係など、さまざまな理由でイライラしたり、落ち込んだり、脱力するぐらい疲れを感じたりすることもあります。時には、食欲がなくなったり、落ち着かずに眠れなかったりすることもあるでしょう。このような症状は避けられないこころの反応の一種であり、すべてが必ずしも病気の症状とは限りません。
こころの異変には、早めの対応が大切
しかし、そのような状態からなかなか抜け出せなかったり、ストレスや落ち込みの原因とまったく関係がない場面でも気持ちが不安定になったりしてしまうときは、早い段階で専門機関に相談することをおすすめします。
身体の病気で「早期発見が大切」だといわれているのと同じように、こころの病気も、早く気づいて対処すればするほど回復しやすいといわれています。しかし、こころや思考などは目に見えず、痛みもないため、身体の病気以上に変化に気づくのが難しいものです。だからこそ、自分の「こころ」を定期的にケアするという意識をもち、何か不安を感じたときは専門家に相談することへの心理的な抵抗を取り払うことが大切だといえます。また、まわりの人からの「最近疲れているの?」「元気ないね」といった言葉のサインも、こころの病気を早期に発見するヒントになるでしょう。
同時に、自分のまわりの人の変化にも無関心にならず、以前と比べて様子がおかしいと感じたら専門家への相談をすすめてみてください。
「こころ」の問題を相談できる窓口は?
身体の病気であれば、問題のある部位や症状によって受診するべき病院を決めやすいものですが、「こころ」の問題の相談先は、なかなか思いつかない方も多いことでしょう。ここでは、相談に乗ってくれる各自治体や医療機関をご紹介します。具体的な電話番号などはお住まいの地域などによって異なりますので、こちらで紹介する機関をお近くでお探しください。
■保健所■
各都道府県、市や区に設置されており、保健師や医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。保健、医療、福祉、思春期や引きこもりなどの分野の相談も受け付けています。
■保健センター■
各都道府県、市や区に設置されており、保健師や医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。保健、医療、福祉、思春期や引きこもりなどの分野の相談も受け付けています。
■精神保健福祉センター■
こころの健康や精神科医療、アルコール・薬物依存症の家族の相談、社会復帰などの相談を受け付けています。
■こころの病気を扱う医療機関■
*「精神科」「精神神経科」うつ病をはじめとするこころの病気に対応します。
*「心療内科」心理的な要因によって身体になんらかの症状がある方を対象としていますが、こころの症状だけでも診察をする病院・クリニックもあります。
*「神経内科」脳や脊髄、神経、筋肉の病気を診る内科ですが、こころの病気を含めて診察をしてくれるところもあります。
■夜間・休日の精神科救急医療相談■
病院が閉まっているであろう、夜間や休日に相談を受け付け、情報の提供や必要に応じて各医療機関との連携を図り、対象者の社会復帰を支援してくれます。各地域によって、名前が異なりますのでご注意ください。厚生労働省が、全国の窓口の一覧表をH Pにまとめています。
■こころの耳電話相談■
仕事とメンタルに関わる悩みについて、電話で相談を受け付けています。全国の労働者やその家族はもちろんのこと、ストレスチェック制度や過重労働による健康障害の防止対策など、企業の人事労務担当者などからの相談にも対応しています。