従業員の健康維持にはオフィス環境の整備が重要
新型コロナウイルスの感染拡大以降、私たちの働き方は大きく変わりました。特に、今までオフィスで仕事をしていた人たちが、リモートワークという形で自宅やサテライトオフィスで仕事をする機会が増えたことは大きな変化です。一方で、リモートワークという働き方が難しい職種や企業も多くあり、そのような人たちが働く場であるオフィスの在り方が見直されています。
オフィスは、従業員が多くの時間を過ごす場所です。新型コロナウイルスの性質により「密」となる環境のリスクが認知された今、人と人の間で十分な距離を取れないまま働かざるを得ないオフィスや、換気がしにくいオフィスなどは、従業員の健康に何らかの影響を及ぼしかねません。また、コロナの影響がなかったとしても、過ごしやすい、働きやすいオフィス環境の整備は従業員の労働の満足度に大きく関わります。衛生的でゆったりと過ごすことができ、人の動線や利便性にも考慮されたオフィスでは、生産性も向上するでしょう。
健康経営を実現するための指標
経済産業省が発表した「平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業 健康経営オフィスレポート」には、健康経営に貢献するオフィス環境について次のような指針がまとめられています。
『オフィス環境において従業員の健康を保持・増進する行動は、大きく分類すると7つある』として、「A.快適性を感じる」「B.コミュニケーションする」「C.休憩・気分転換する」「D.体を動かす」「E.適切な食行動をとる」「F.清潔にする」「G.健康意識を高める」を挙げています。
そして、これらの行動を誘発するオフィスが、「プレゼンティーズム(健康問題による出勤時の生産性低下)」と「アブセンティーズム(健康問題による欠勤)」を解消できる“健康経営オフィス”であると示しました。
「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」とは?
「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」とは、WHO(世界保健機関)によって提唱された、健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標のことです。まだ私たちには耳慣れない言葉ですが、それぞれが従業員のパフォーマンスの状態を示しています。
まず「プレゼンティーズム」は、欠勤や遅刻にはいたっておらず勤怠管理上は特に問題はないものの、実は健康問題が理由で生産性が低下している状態のことです。表面上は特に問題がなさそうに見えてしまうため、労働者の様子をよく観察しないと気付くことができないでしょう。
そして、もう一つの「アブセンティーズム」は、健康問題によって仕事を休んだり、遅刻したりしてしまっている状態を指しています。まわりの人が気付くぐらい、勤務状態が目に見えて悪くなります。
健康を保持・増進する7つの行動への意識を
「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」のようなパフォーマンスの低下は、労働者の健康状態の悪化によって起こります。労働者の健康状態を悪化させる要因は、メンタルヘルスや生活習慣病、感染症、アレルギーなど、いくつも挙げられますが、このような要因を働き方やオフィス環境によって少しでも減らす努力が求められています。
具体的には、「A.快適性を感じる」「B.コミュニケーションする」「C.休憩・気分転換する」「D.体を動かす」「E.適切な食行動をとる」「F.清潔にする」「G.健康意識を高める」これらの7つの行動を誘発するオフィスへと環境を整えることが大切です。
たとえば、「快適性を感じる」ように緑化やデザインが意識されたオフィスや、「適切な食行動をとる」ことができるよう、健康メニューを提供する食堂などが考えられるでしょう。これらの取り組みをすでに行なっている企業も多くあります。
現代のオフィスは、ただ仕事をするための場所ではなく、労働者の健康をサポートして生産性を向上させるための場所であることを意識する必要があるでしょう。