「静かな離職問題」とは？
問題化されている理由と対策を解説

「静かな離職」は、必要最低限の仕事をこなし、キャリアアップなどは目指さない働き方です。たとえば「簡単にできる業務のみを行う」「余分な労力をタスクに費やさない」「定時の帰宅を毎日徹底する」などの特徴が挙げられます。責任の所在や業務範囲、評価基準が曖昧な企業に起こりやすい問題なので、当てはまる場合は注意しなければなりません。

企業にとって「静かな離職」が痛手になっている理由は、生産性の低下と人材の流出につながっているからです。成長意欲の湧かない環境は従業員のモチベーションを低下させ、結果的に企業の生産性が低下します。特に優秀な人材は、ほかによい環境を求める傾向があるので、企業の成長に必要な人材がどんどん離職してしまうおそれがあります。職場環境や人間関係の悪化にもつながりやすく、企業力が低下する原因になるでしょう。

「静かな離職」を避けるには、まず職場環境の見直しが必要です。リモートワークを推進したり、フレックス制度を導入したりと、柔軟な働き方の追求をしてみてはいかがでしょう。さらに従業員のキャリアをサポートできるような体制づくりも進め、従業員が多様なキャリアや働き方ができる環境をつくることも対策の一つです。また、評価制度を改善し、働きがいを感じられる仕組みづくりも欠かせません。

「静かな離職」が増加している問題は、実は世代間によって価値観が分かれています。それぞれの世代間の価値観を理解したうえで、対策を進めることも大切です。

X世代や団塊世代は、「静かな離職」に否定的な人が多い傾向があります。キャリアを積極的に築き、評価や報酬アップを目指すのが当たり前という感覚も多いでしょう。そんな世代からすると「組織での仕事はそこそこ頑張る」といった働き方が歯がゆく思えてしまうのかもしれません。

Z世代やミレニアル世代は、「静かな離職」に肯定的です。自分らしく生きることを最優先しているため、価値観に合わない仕事や組織からは距離を置く傾向があります。仕事とプライベートのバランスも重視するので、より個性を活かせる働き方を求めて転職を行う人は多いでしょう。

「静かな離職」が増加している問題は、早めに対策を行うことが大切です。いつまでも古い体制にこだわっていると、優秀な人材を流出させてしまいます。企業の成長率や生産性を向上させるためにも問題から目を背けずに、柔軟な働き方を認める体制づくりを検討したほうがよいでしょう。